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「…………」
呆気にとられたようすで正人はその紙を見ていた。真奈美はこの世の終わりだともいう悲痛な叫び声を上げると、家の門にしがみついた。
よりによって、よりによって彼みたいな人に見られるなんて。彼みたいな頭の良い人に見られるなんて。
37。
その紙の上の方、そこにはそんなひどい数字が書かれていた。
真奈美が絶望に浸っている中、正人は無言でそのテスト用紙と小さなお守りを拾い上げた。そして項垂れている真奈美にそれらを手渡してくる。
「数学、苦手なの……?」
「うん……」
これはもう苦手どころの話ではない。けれど苦手なのかと問われればその通りなので真奈美は力無く頷いた。
「教えてあげよっか?」
「え……?」
一瞬彼が何と言ったか分からなかった。
その思いがけない一言に真奈美がまじまじと正人を見つめると、彼は少しバツが悪そうに頬をかいた。
「石井がよかったら……数学教えるよ。その、俺結構得意だし」
「え……ほ、ほんと?」
「うん」
まさか彼がこんなことを言ってくれるなど考えもしなかった真奈美は、いまだ信じられないようすで正人を見つめた。
呆れられるだけかと思っていたのに。
真奈美は嬉しそうな笑顔を浮かべた。
呆れないで、勉強を教えてくれるなんてやっぱり彼は親切な人だ。
「ありがと。それとよろしくお願いします」
ぺこりと小さく頭を下げる。
そんな真奈美に正人が微かに頬を赤くしたのを、彼女が気付くことはなかった。
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