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「これをここに代入して、公式に当てはめて解けば……ほら」
「あ、あーほんとだ」
そうして始まった放課後の勉強会は今日で1週間のときを数える。
学校の図書館では席数が少なく、すぐに人でいっぱいになってしまうので、正人の提案によって2人は学校のすぐ近くにある区立図書館に訪れていた。
勉強時間は午後5時まで。そのあとは動物病院に向かい、子犬の様子を見に行く。
子犬は順調に回復を遂げていた。日に日に元気になっていく姿を見られるのはとても嬉しい。
「石井はやり方さえ分かればよくできるから大丈夫だよ。実力テストにも十分間に合うと思う」
「そうかな?」
学年でもトップクラスにいる正人にそう言われると何だか自信が出てくる。真奈美は覚えず微笑みを漏らした。
「でもほんと高田くん教え方上手だよね。すごくスムーズに説明が頭に入ってくる。数学の先生、高田くんだったらよかったな」
「はは、それじゃ俺石井ばっか贔屓しちゃうよ」
「ええ? じゃあやっぱり高田くんが先生の方がいいかも。そうしたらわたし、数学得意になったりしてね?」
くすくすと笑って真奈美は言った。すると正人は少し困ったような、それでいて何だか情けない笑みを浮かべる。
「ほんと、石井って強敵だな」
「え?」
「いや、何でもない。そろそろ病院行こっか?」
彼が言った言葉の意味が分からず首を傾げた真奈美に、正人はにっこりと穏やかな笑顔を向けてきた。
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