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リウとすぎちんは銀座線へと延びる大きな階段の脇を駆け抜け、玉川改札の前へやって来た。 目指すは東横線改札。 この立体的なシブヤ駅の構造は、挑む者の体力を消耗させる。コンコースが無い設計のため、どの路線も乗り換えるために割と距離のある移動を余儀なくされるうえ、階段も多く、平坦に続いているように見える通路も若干の勾配がある。 リウは中央改札へと続く階段を登ろうとした時、上から戦士が飛び掛かってくるのに気付き、のけぞってそのまま転がり落ちた。 頭を打ち、意識が朦朧とする。 それでも目を開け、霞む視界で階段の中腹を見上げると、先ほど飛び掛かってきた戦士とすぎちんが重なり合っているのが見えた。 2人は止まってるようだったが、次の瞬間すぎちんが崩れ落ち、ゴロゴロとリウの足元まで転がって来たのだった。 「すぎちん!!」 リウが呼びかける。 すぎちんは薄っすらと目を開け、力を振り絞るように言った。 「リウ、行け、この先に、ケルベロスが、いる……」 すぎちんを倒した戦士が、階段の上でリウに向かい剣を構えている。 呼び掛けても答えなくなった友人から手を離し、リウは階段を一気に駆け上がり、襲って来る戦士を手すりに登ってかわした。 背後に廻り剣を奪う。 その時、相手の戦士とリウは目が合った。 同じ年の頃の青年だった。 「同じ人間相手に、何でこんなこと」 思わず口にした問いかけに、その戦士は答えるでもなく、「同じ人間?」とつぶやく。 そしてリウに蹴落とされ、戦士は階段から転げ落ちた。 振り返らず、ひたすら連絡通路を走り続ける。ここまで来ると他のレジスタンスは誰一人として残っていない。 リウは地下へと潜る長いエスカレーターを下る。 視線の下で徐々に露わになる改札の全景。 リウは東横線改札前へと辿り着いた。 ここまで来れば、もう―…… そう思ったのも束の間、リウの抱いたほんの少しの安堵は、漂うただならぬ気配によって消し去られた。 何だ、これ……? 感じたことのない、恐怖とも不安とも取れぬざわめき。
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