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#1 三ノ宮リウ
「何やってんだろ?」
飲みかけのペプシコーラの傍らで、リウはぐったりとテーブルに突っ伏した。
向かいにはみやちんとすぎちんがそれぞれリウと同様、疲れ切った様子で椅子の背もたれに寄り掛かかっている。
シブヤ駅での戦闘を終えると、3人はこの吉祥寺のファストフード店で反省会及びグチを垂れながら時間を潰すのが恒例である。
ストローをかじりながら、みやちんが半笑いで言う。
「まじ勝てる気しないよねアイツら。何食ってたらあんなんなるの?」
「軍隊だからなぁ、肉じゃね?」
すぎちんは残り少なくなったポテトを一本口に運ぶと、隣のみやちんに顔を向けた。
「つかみやちん、死んだんじゃねーの?」
「おかげさまで、生きてますけど」
「いやいやいやいや死のうよあそこは、完璧そういう流れだったじゃん、冷めるわ」
「知らねーよ、冷めるとかそっちの勝手だろ」
俺から言わせればすぎちんも十分死ぬ流れだったぞ。
出かかった言葉を面倒臭いので飲み込むと、リウは顔を上げた。
このように、駅での戦闘は命を奪われない限り、受けた傷などはほぼ無効化されて生還できる。仕組みはよく分からないが、何とか下りの電車に乗ってシブヤ駅を出ることさえ出来れば血も止まるし、現にリウの首の傷は今やかすり傷程度になっていた。
「つかチートすぎんだよケルベロス」
「え、リウ、ケルベロスと戦ったの?地獄の門番?」
「すげーよなー、生で見れてよかったじゃん」
「よくねぇわ!お前らが弱すぎなんだよ」
リウは言いながら氷の溶けたドリンクの水滴を紙ナプキンで拭いている。意味は無い。
それにつられ、すぎちんが自分のカップを手に取ると、リウはそこに出来ていた水滴も拭いた。
「つかこの状況で俺ら真面目に通学しようとしてるとか草」
「それな。正直行っても行かなくても、家で授業取ってれば単位くれるし一緒ってゆー」
そうなのである。
リウたちが通っている高校はオンラインでの授業の出席、および試験を受けることを認可しており、登校して出席しているのはシブヤ駅を経由せず中目黒に出られる神奈川方面に住む生徒、それも実際に教師の顔を見て単位取得を懇願する必要のある生徒のみという状況なのだ。
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