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それでも登校するために、リウがこの色白なインドア・オブ・インドアの友人を2人巻き込んでまで毎朝シブヤ駅で戦闘を繰り広げるのには、確固たる、そして絶対に譲れない理由があった。
「でもさ」
リウが力強く拳を握る。
「学校は行くことに意味があるんだよ!休み時間も学園祭もツレションも無い高校生活なんてお前ら!それでいいのかよ!?」
「いいよなぁ?」
みやちんは聞き飽きたとでも言いたげに、語気を強めたリウの言葉を、まるで目の前の煙でも払うかのように返した。
すぎちんも続ける。
「うん。だってそれがしたいなら最初っからさ、家の近くの学校行けばよくない?」
「う……」
「そうそう。リウさ、何で家吉祥寺なのに中目の高校にしたの?」
「シブヤ駅経由しないで行くのクッソ面倒じゃん。調べりゃ分かるよなぁ?」
「なぁ?」
返す言葉もない。そもそも戦闘に乗り気でない2人に付き合って貰っているという後ろめ
たさもあり、リウにはそれ以上反論することが出来なかった。
所定の位置にトレーを戻し、店員の「ありがとうございましたー」を背に、3人は店を出た。
平日の昼間にも関わらず、吉祥寺の商店街は賑わいを見せている。
お互い軽く別れを告げると、リウはいつも通り、みやちん、すぎちんと逆の方向へと歩き出した。
吉祥寺は昔から人の多い街だったけれど、平日の昼過ぎにコンビニで夕刊を買うのにも並ぶほど混雑するようになったのは、やはり駅があんな風になってからだと、リウがよく行くラーメン屋のおっちゃんが言っていたのを思い出す。
確かに子供の頃はこんなじゃなかったよなぁと思いながら、リウはすれ違いざまにぶつかりそうになったお姉さんの短いスカートから伸びる足を目で追った。
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