暴君と秘密の彼女

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昼食は出前を取ると言っていた天眞。 一度出勤したら退勤するまで社外には出ない天眞。 でも今の天眞はそのふたつとも当てはまらない行動をしている。 そんな普遍的な行動に嫌な予感を覚えた私はこっそり天眞の後をつけていた。 颯爽と歩いて行く天眞は通りすがりにあるいくつかの飲食店を素通りして行く。 (やっぱりおかしい!) 食事に出たのならその辺の店に入っていいはずだ。それこそ和洋中、カフェにファミレスなど、ごく短い距離の間に様々な種類のお店が軒を連ねているのだから。 (もう、何処に行こうっていうのよ!) 見つからないようにコソコソと、そして歩幅の広い天眞の後をついて行くのはとても大変だった。 「はぁ、はぁはぁ……」 息が上がりそろそろ体力の限界というところでようやく天眞は何処かのビルに入って行った。 だけどすぐに其処がただのビルではないことに気が付いた。それは【オールドシーズンホテル】と書かれた看板を見つけたから。 (ホ……ホテル?!) その三文字にギョッとした。 (なんでこんな処に?!) 動揺しながらも天眞を追うようにホテル内に入って行った。 中はよくある普通のビジネスホテルといった感じの雰囲気で人がまばらにいた。 天眞の姿を探しキョロキョロしているとロビー奥にソファが幾つも置かれている場所があり、その一角で天眞の後姿を見つけた。 だけど其処にいたのは天眞ひとりではなかった。
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