暴君と秘密の彼女

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(……嘘!) 私の方に背を向け、天眞とその隣に髪の長い女性が座っていた。 その場はまるで仲のいい男女が密会をしているような雰囲気を醸し出していた。 (まさかこれって……う、う、浮気現場?!) そんな考えが頭の中に色濃くこびりついた。 だけど天眞に限って浮気は考えられないと何度もいい訊かせた。 (そうよ! 天眞は私にゾッコンなんだから浮気なんて絶対に考えられない!) 必死になって雑念を払うも、天眞とその顔も見えない女性はやけに親密そうだった。 (なんか……やけに込み入った話しているっぽい) 席境の観葉植物に身を隠しながらふたりの様子を見ている私は傍から見たら不審者だろう。 (あぁ……もう、いっそのことふたりの前に出て行こうかしら) そんな気持ちになった矢先、いきなり天眞と女性がソファから立ち上がった。 (!!) 慌てて低頭姿勢を取る。幸いにもふたりは私が身を隠している席とは反対側から回ってロビーを抜けて行った。 (今度は何処に) 若干力の抜けかかった脚を奮い起こしながら見つからないようにふたりの後を付けて行った。 しかしロビーを抜けたふたりの姿は曲がり角の突き当りのエレベーター前で消えていた。 (行き止まりってことは……ふたりしてエレベーターに乗ったってこと?!) それはどういうことかというと……… (つまり……つまり天眞とあの女は………部屋、に行ったってことで……) それはつまり──……と茫然としている私の目には上の階へ上がって行くエレベーターの階数表示の点滅の赤色しか映っていなかった。
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