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「やっぱり……やっぱりやっぱりぃぃぃ~~~浮気していたのね! こんの浮気者ぉぉぉぉ──!」
剝き出しの怒りに任せて天眞に飛びかかり何度もその頬を叩いた。
「許さない! 許さないわよ、絶対に!!」
天眞の体を押し倒し馬乗りになってパンパンと何度も頬を叩く。その間天眞は目を瞑ってジッとされるがままになっていた。
「私のことを好きっていっていたのに…! 愛してるっていったくせに…! それをいっている口で違う女にも同じようなことをいったの?!」
「……」
「天眞! 何とかいいなさいよ!!」
天眞の頬は赤くなり叩いている私の掌もジンジンと痛かった。
「言い訳のひとつも出来ないっていうの?! 天──」
「……お嬢様」
「!」
呟くように放たれたそれはとても久しぶりに聞いた名称だった。
「なっ……なっ……」
「もう、お止め下さい。お嬢様の白魚のような手が紅葉のように真っ赤に染まっています」
「~~~な、何いって……!」
差し出された天眞の両手が私の痛む掌を握った。
「お嬢様、この天眞が優しく労わって差し上げましょう」
「~~~」
(なんで……なんでこんな時に執事モードに!)
久しぶりに訊いた天眞の優しい口調に不覚にも胸がドキンドキンと高鳴って堪れなくなった。
ゆっくりと上体を起こした天眞の頬は叩かれたせいで真っ赤になっていた。
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