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「お嬢様、痛いでしょう?」
「……」
天眞に擦られている赤い掌が酷く熱かった。
「俺なんかの頬を叩いてこの清らかな手を痛めてはなりません」
「……天眞」
「はい」
「頬、痛いでしょう」
「いいえ。お嬢様が受けた痛みに比べればこんな痛みは何でもありません」
「っ」
何故か私はこうなった経緯をコロッと忘れて、昔に戻った天眞の優しい執事モードに酔いしれてしまっていた。
つい戦意喪失してボーッとしていると突然視界が反転した。
「?!」
トンッと押し倒された私に透かさず馬乗りになった天眞はよく知る悪い顔をした。
「おい、どういうことだ」
「……へ?」
「いきなり俺を浮気者呼ばわりして挙句の果てには押し倒してビンタの往復とは随分調教が行き届いているようだな」
「な……な、何を、いって……」
「おまえが何をいっている」
優しい執事から俺様暴君へと豹変した天眞の唇が私のものと重なり凄い勢いで貪られた。
「んっ!」
息苦しさからもがけばもがくほどに天眞の舌は私の口内を攻め続けた。
(な、なんでいきなりキスされているの?!)
どうしてこんな流れになったのかがよく分からない。決してこんな甘い雰囲気になるような流れではなかったはずなのに。
頭の中でグルグルと考えているうちに天眞から受ける行為に頭も体も痺れてしまい何も考えられなくなってしまった。
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