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お互い荒い息を吐く中、天眞にギュッと抱かれた。
「天眞…?」
「仮に俺が凛子を裏切るようなことがあればビンタじゃなくていっそのこと殺せ」
「!」
「凛子を裏切ってまで俺は生きていたくない。だったら凛子に刺されて絶命する方がマシだ」
「や、やだよ! 天眞を殺すなんて!」
「あぁ、俺だって凛子を殺人犯になんかにしたくないからな。だからそれはあり得ない話なんだ」
「……」
天眞の話は物騒で時々ついていけなくなるけれど、だからこそ信じられると思った。
天眞が私や父の事を想って色んな処で動いているのを知って益々天眞が愛おしくなった。
「という訳で式を挙げるのは少し先にしたいのだが」
「うん。勿論賛成よ」
「そうか、物分かりがよくて助かる。散々調教した甲斐があったな」
「ちょ、調教された訳じゃないから! 調子に乗るんじゃないわよ」
「なんだ、まだまだ元気だな、凛子」
「!」
そして私に向けられた見慣れた悪い事を考えている黒い笑顔。
「そうか、まだ元気か。そうかそうか」
「や……あ、あの……もう……もう、ね?」
「本当、俺好みに育ってくれて嬉しいよ、凛子」
「~~~~!!」
結婚式なんか挙げなくたって私はもう天眞の妻としての役目を充分過ぎる程に全うしているような気がしてならなかったのだった。
暴君と秘密の彼女(終)
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