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「はぁ……成金娘の偏見癖には心底辟易する」
「え」
「此処は俺の唯一無二の家だ。部屋だって二間あるしトイレと風呂だってついている」
「……もしかして此処が実家、なの?」
「そうだ」
「!」
(昔、借金のカタに抵当に入れられそうになったという家がこの古い木造の小屋なの?!)
衝撃の事実に驚き過ぎて口が開いたまま呆けてしまった。
築何十年経っているのか分からないくらい古さを感じる処にいる私は、絶賛混乱の渦の中に突っ立っていた。
「おまえが今、何を考えているのか手に取るように分かる。だけどな、こんなボロ屋だって俺やおふくろにとっては父親が遺してくれた唯一の財産なんだ。それを馬鹿にするのはいくらおまえでも許さない」
「……」
(これ……本当に天眞なの?)
家の小ささや古さにも驚いているけれど、それ以上に驚いているのは目の前にいる天眞だった。
先刻から口の悪さマックスで私に向かって喋っている男は本当にあの天眞なのだろうかと眉間に皺を寄せた。
「なんだ、その顏は」
「あんた、なんでそんなに口が悪いの」
「……」
「私に向かってよくもそんなタメ口全開で気安く喋っているわね! 何なのよ、一体っ」
「此処は俺の家だ」
「は?」
「俺が家主でおまえは厄介になっている立場の人間だ」
「や、厄介って…! 勝手に連れて来てどの口がいってるのよ!」
「じゃあ出て行け」
「!」
蔑むような視線と口調に一瞬体に冷たいものが走った。
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