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「はぁ……帰宅してみれば布団で眠って何か苦しそうに唸っているから何事かと思ったが心配して損した」
「心配、したの?」
「病気なんかになっていたら金がかかるからな。そういう意味での心配だ」
「酷い!」
天眞の言葉に憤慨した。つい今しがた見た夢で天眞に対して申し訳なく思っていたのが今の言葉であっという間になかったことになった。
天眞が少し疲れた表情を見せながらスーツを脱いで部屋着に着替えた。
その様子をチラチラと見ていた私はふと天眞の背中にある古い傷に気が付いた。
(あ……あの傷って)
天眞の体のあちこちにある何らかの傷跡を見つける度に気持ちが落ち込んだ。
小学生の頃の私は割とやんちゃで、様々な騒動を起こしていた。その度に天眞は体を張って守ってくれた。
『天眞は私のお世話係なんだから体を張るのは当然よ!』なんて当時は強がっていたことをぼんやりと思い出した。
(ははっ……これじゃあ天眞に嫌われるのは当然だわね)
「──おい、訊いているのか」
「え」
物想いに耽っていると天眞に顔を覗き込まれた。
「俺の話はちゃんと訊けといっているだろう」
「! っ、いひゃいっ」
ムニッと頬を引っ張られ、その痛さから我に返った。
「俺の前でボケーっとするな」
「~~~」
天眞の指が離れた頬はジンジンと痛かった。
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