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(何よ、いくら私が嫌いだからってこんな扱い、酷過ぎる!)
少し涙目になりながらも天眞を睨みつけると、それに気が付いた天眞は少しだけバツが悪そうな顔をした。
だけどそれはほんの一瞬のことですぐに元の意地悪そうな無表情に戻っていた。
「で、今日は何を覚えた」
「は?」
天眞が何をいっているのか分からずに首を傾げる。
「おまえ……忘れているな、俺がいったことを。其処の本を読んで何かひとつでも覚えろと朝、いっただろう」
「……あぁ」
(そういえばそんなことをいっていたような)
すっかり忘れていたけれど今、それをいわれて慌てて思い出した。
「覚えた事を俺に披露しろ」
「へ?」
正直本なんて読んでいないから覚えた事なんて何もない。何もない……の、だけれど……
「……」
(な、なんか何も覚えていないって言える雰囲気じゃないっ!)
恐ろしいほどに睨まれ、正直に言うことが怖くなった私は一生懸命脳みそを絞って考えた。
(──あっ! そうだ)
「めざしって魚が苦いってことを覚えた!」
「は?」
「朝ご飯に置いてった魚があったでしょう? めざしっていうの。アレ、めちゃくちゃ硬くて苦かった」
「……」
「……ってことを覚えた、ん、だけど……」
何故か言葉を発すれば発するほどに天眞の表情は険しくなって行った。
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