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「あんた、可愛いわねぇ」
「あ……あの……」
マジマジと見てこの男の子が欲しくて堪らなくなった。
「凛子、そんな小汚い子どもに近寄ってはダメだろう!」
「お父さま、凛子、この子が欲しい!」
「は? な、何を」
「欲しい欲しい! 今日は凛子の誕生日なんだから何でも買ってくれるっていったぁ」
「そ、それは店に売っている物をという意味で、そんな子どもを買うとは」
「買ってくれないなら凛子、お父さまのこと嫌いになる」
「っ、り、凛子!」
私はこの歳にしてどうしたら欲しいものが手に入れられるのかという技を知っていた。
お父様にこの切り札を出せば買ってもらえない物など何もないのだと知っていた。
「ねぇ、いいでしょう? お父さま」
「………し、仕方が……ない」
「わぁ、ありがとう! お父さま、だぁいすき♡」
そうして私は男の子の気持ちも何も考えずに、ただ欲しいと思ったからそれを手に入れただけだったのだ。
そんな事があった7歳の誕生日から瞬く間に月日は過ぎ、気が付けば私は成人式を迎えた歳になっていた。
「……へ? 今、なんて言ったの?」
「ですから、倒産したと言いました」
「倒産って……えぇっと……会社が潰れたって意味の倒産?」
「よくご存じでしたね、その通りです」
「……」
これから友だちと遊びに行こうと支度していた私にそう告げた男はあの日、7歳の誕生日に欲しいと強請って手に入れた可愛い男の子だ。
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