世界の中心に暴君 第一章

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その父がまさか──…… 「なので昨日付けで会社は倒産。多額の負債だけが残りました」 「負債っていくらよ」 「凛子様にいってもどうにもならないぐらいの途方もない金額です」 「そ、んな……」 あまりにも突然のこと過ぎて何をどうしたらいいのか全く分からず、力無くその場にへたり込んでしまった。 「既に負債に充てられるものは全て抵当に入っています。この屋敷もそのひとつになります」 「……」 「屋敷に勤めていた従業員には細やかながら退職金を配り全て解雇しました。残るは凛子様ただひとりということになります」 「……ちょっと待ってよ、お父様は?」 「……」 「お父様はどうしたのよ! 昨日朝、私が出かける時に挨拶したきりで今日はまだ会っていないわ。お父様に会わせてよ!」 「いらっしゃいません」 「どういうことよ!」 「今頃はインド洋周辺の海域を目指しているのではないでしょうか」 「は?」 「社長は少しでも借金返済をするために昨日午後から遠洋マグロ漁船に乗り込んでいます」 「?!」 (嘘っ!) 信じられないという顔で茫然としている私に彼、加々宮天眞(かがみやてんま)は続けた。 「さぁ、必要最低限のものを鞄に詰めて屋敷から出てください」 「! 天眞、あんた何様よ! 私にそんな口をきいて──」 天眞を叩こうとして振り挙げた腕は簡単に受け止められてしまった。
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