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私のお願いをきいてくれたお父様は、天眞を私付きの世話係にするという形で引き取り、その代わりに借金は全てチャラにするという交換条件を出したところ母親は泣く泣く承知したという顛末。
その時の私はただ天眞が欲しい、傍に置いておきたいとまるで目新しい玩具を手に入れるが如く天眞を求めたが、今となっては時々考えてしまう。
あの時、天眞はどんな気持ちだったんだろう。
母親から引き離され、屋敷で過ごすようになって、全ての日常を私を中心に考えて行動することを強要された時の気持ちはどうだったのか。
でもそんなこと私には分からない。だって私は天眞じゃないんだから。
ただ、母親から引き離される気持ちというのは私にも何となく分かるかもしれない。
母親の温もりを知らずに生きて来たけれど、やっぱり見た事も触れた事もない母でさえ恋しいと思うのだから。
(きっとずっと私を恨んで生きて来たんだろうな……天眞は)
だけどその立場上、表面的には天眞は私にとっていい遊び相手だった。
何でも私のいうことをきいて、望みを叶えて、私の傍にいるのが恥ずかしくないように早乙女が用意した中高大一貫の名門学校をそれなりの成績で卒業した天眞は周りに対してちょっとした自慢になった。
それに昔は女の子みたいに可愛い顔立ちをしていた天眞は成長すると共にその可愛らしさが精悍且つ艶やかで綺麗な造形に変化して行った。
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