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私にとってはその見た目の良さも誇れるものになっていて、事ある毎に天眞を連れて歩いて友だちや知り合いの女の子たちの羨望の眼差しを浴びたものだった。
『凛子様、何なりとお申し付けください。私は凛子様だけのお世話係なのですから』
「……」
天眞はいつも優しく接してくれた。どんな我がままにも嫌な顔ひとつ見せなかった。
(それなのに……)
先刻の天眞の行動が酷くショックだった。
早乙女という誇りある家名もお金が無くなって借金を作ってしまえばただの落ちぶれた家名になってしまうのだと思い知った。
(一日にしてこの変わり様……なんだかなぁ)
怒涛の出来事は私から気力と体力を奪っていった。
(これからどうしよう……何処に行ったらいいの?)
この時になってようやく屋敷を出て、何処へ行けばいいのか分からないという事に気が付いたのだった──。
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