暴君と秘密の彼女

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とりあえず土下座を止めさせ、何度も頭を下げ謝り倒した警備員を持ち場に戻らせた。 「凛子様、このビル全てがリンテンの本社社屋です」 「へ?」 「主な業務はレンタル業ですが最近は様々な業種にも携わっています。倒産寸前の企業を幾つか買い取り新たに再興したり業務を引き継いだりと、それはもう一括りでは説明しきれない程の手広さでございまして──」 「……」 「お屋敷にいた時から社長は優秀な方だったと噂で訊いていましたがまさかこれほどまでとは思わず、もうただただビックリのひと言です」 「……えーっと」 先程から私に懇切丁寧に事情を話してくれているこの人は受付嬢の牧山さん。元は早乙女家で私の身の回りの支度をしてくれていた(らしい)人。 (薄っすら記憶にはあるのよ。確か私よりも3~4歳上で綺麗な顔をしているなって感じで覚えていたような……) 「社長が凛子様を妻として迎えたことを知った時は驚きましたが今では早乙女に勤めていた従業員のみんなが祝福しています」 「あ……そ、そう」 (って、まだ正式な妻じゃないんだけど! ……まぁいいか) 牧山さん曰く、天眞は解雇した屋敷の従業員の何人かを新しく起こしたこの【リンテン】に従業員として雇い直していたとのこと。 実際起ち上げた当時のリンテンは小さな会社で、とあるビルの一室から始まったそうだ。 それが天眞の手腕であれよあれよという間に大きく成長して行き、会社発足からわずか一年足らずでこの5階建てのビル丸ごとが本社となり従業員もざっと十倍に増えたそうだ。
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