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「さる方がどうしても中将のお墨付きを欲しがっていてな、密かに会う事を望んでおられる。私もそれがないと任命状を出せないんだ」
シャインはアルバールと同じ空気を吸う事すら嫌になっていた。
この男は陽気にふるまいつつ、裏で人の弱味につけこんで、その見返りに小金を手にしているのだろう。
だからまかり通らない人事が通ったりする。
皮肉にもシャインの昇進もきっと、裏でその事を知っているアドビスが、アルバールに圧力をかけて認めさせたに違いない。
腕をつかむアルバールの手は異様に熱っぽく、力を込めて締め付けてくる。
「放して下さい。あなたの期待には添えません」
「何もかもお膳立てしてくれと言ってるんじゃない! あんたが中将を連れ出してくれれば、その後はこっちで何とかする」
シャインは渾身の力をこめて腕を抜こうとした。
が、アルバールの両手が吸い付いたようにそれを放さない。
彼の体重もかかってびくともしないのだ。
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