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「うらやましいですな」
さみしそうにアルバールは酒の泡をすすった。
おそらくジョッキの半分以上がそうだろう。
「……どういう意味です」
シャインは内心いらいらしてきた自分を落ち着かせる為に、果実酒のグラスを取り上げ一口飲んだ。
軍のパーティとか会食の席以外でアルコールは滅多に飲まないので、飲める酒はこのシシリー酒ぐらいしかないのだ。
「いやはや、そんな怖い顔しないで下さらんか。それだけあなたは、魅力的な条件を、いくつも備えているってことなんですから」
シャインはアルバールの言う事にひっかかるのを感じた。
「俺の話は置いておきまして……本当に条件に合う航海長はいるんですね。総務部の方から連絡がいっているはずですが、うちのシルフィード航海長は海賊を捕らえる際に腕を折り、現在二ヶ月の休職中です」
「ええ、知ってますよ。航海長は操船の要。艦長が針路を決めたら、その通りに船を動かさねばならない。それ故経験の多さを問われます。彼に乗員全員の命を預けているといっても過言ではない」
「その通りです」
アルバールは陸上勤務者であるが、その辺りのことはちゃんと理解している。
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