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「放さないと、この事を中将にしゃべりますよ」
声を荒げることなく寧ろ押し殺した声色でシャインはつぶやいた。
直視されるのが心底恐ろしいと思う程、感情のこもらない冷たい目でにらみながら。
「だ、だ、だ、だからなんだ……若造めっ! ……くそっ!!」
アルバールは額にてかてかと冷や汗を浮かべて、渋々シャインの腕を放した。
この動揺具合は尋常ではない。
シャインには大方アルバールが考えていることに見当がついていた。
海軍省は決して一枚板ではない。
高官達は自分の立場を誰よりも有利にしようと様々な根回しをしている。
例えばアドビスだってそうだ。
アドビスはアルバールのやっていることを知っている。
けれど何らかの事情でそれが明るみになれば、ドジを踏んだアルバールに利用価値無しと判断し、彼を免職にするだろう。
まあ、アルバールへアドビスの口利きを依頼した人間も、このことは誰にも知られたくないはずだ。
シャインの想像通り、アルバールはテーブルに両手をついて悔し気に身を震わせていた。
彼に向かいシャインは口を開いた。
脅すつもりはないが、もう二度と関わりたくない。
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