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「ああ気にしないで下さい。ただの独り言なので。だから……酒を飲むのは好きじゃあないんです。つまらない事を言うクセがあるので」
手にしていた酒ビンをじゅうたんの上に置き、シャインは軽く両手で顔をはたいた。
ヴィズルの人当たりのよさそうな雰囲気のせいで、警戒心が薄れてしまった事を悔やみながら。
命の恩人とはいえ、まだ胸の内をひけらかす話など、到底する気はない。
シャインのそんな心境を、ヴィズルは察したようだった。
「そういうクセはよくないな。俺だったら、知られたくない事は、鋼鉄の箱の中にしっかとしまい込んで、ツェイツリプスト=ツウェリツーチェのあごひげから作った鎖で、ぎっちぎちに縛って、海神・青の女王に頼んで、果ての海の海底へ沈めといてもらうぜ」
にやりと白い歯を見せながら、ヴィズルは笑った。
「ツェイツリプス……痛っ……何だって?」
訳の分からない単語が出てきて、シャインは苦笑しながらヴィズルに聞いた。
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