3-7 ツウェリツーチェのあごひげ

9/13
前へ
/659ページ
次へ
「ああ気にしないで下さい。ただの独り言なので。だから……酒を飲むのは好きじゃあないんです。つまらない事を言うクセがあるので」  手にしていた酒ビンをじゅうたんの上に置き、シャインは軽く両手で顔をはたいた。  ヴィズルの人当たりのよさそうな雰囲気のせいで、警戒心が薄れてしまった事を悔やみながら。  命の恩人とはいえ、まだ胸の内をひけらかす話など、到底する気はない。  シャインのそんな心境を、ヴィズルは察したようだった。 「そういうクセはよくないな。俺だったら、知られたくない事は、鋼鉄の箱の中にしっかとしまい込んで、ツェイツリプスト=ツウェリツーチェのあごひげから作った鎖で、ぎっちぎちに縛って、海神・青の女王に頼んで、果ての海の海底へ沈めといてもらうぜ」  にやりと白い歯を見せながら、ヴィズルは笑った。 「ツェイツリプス……痛っ……何だって?」  訳の分からない単語が出てきて、シャインは苦笑しながらヴィズルに聞いた。
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加