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彼等の態度は横柄だったり、がさつだったりするが、ロワ-ルハイネス号にロワールがいることを知ってからは、甲板みがきの手をあまり抜かなくなった。
これは喜ばしい事である。
現在休職中の航海長シルフィードに会えないのは残念だが、(裏表のない大きな子供みたいなシルフィードに、実は最近好感をもち始めている)士官候補生のクラウスと、『歩く規律』とこっそり水兵達の間で、そんな異名をつけられている副長のジャーヴィス。
クラウスは甘やかされて育った気質がまだまだ抜けないため、こっちが『しっかりしなさいよー』と言いたくなる時がある。しかし、副長のジャーヴィスは、先のストームとの一件で、この船になくてはならない存在だと強く思った。
彼の勇気と行動力がなければ、今頃シャインはストームとの取引に応じ、彼女の捕虜になっていただろう。
「そういえばシャインったら、休暇の最初の日と次の日しか、私に会いに来てくれなかったなぁ……」
ロワールは小さくため息をついて、手すりの上に置いた両手の上にほっそりとした顎を乗せた。
アーチ状に石を組んで造られた、高い屋根がある修理ドックのすぐ隣の突堤に、ロワールハイネス号は係留されていた。きれいに船体のペンキまで塗り直されて。
ロワールハイネス号の他にもそこには、同じように修理が完了した、二隻のやや年代を経たスクーナー船とブリッグ船が、船首と船尾からのばされた係留索で突堤の綱止めに繋がれ、潮のうねりに合わせて、船体が左右に揺れている。
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