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「ううん。馬車に乗って、ここから帰るのを見た……だけ……」
ロワールがおずおずと答えると、シャインは顔を上げて再びこちらへ向き直った。困惑しきった表情だが、ひたとロワールを見据えている。どこか思い詰めた様にも見える真剣な眼差しに、ロワールは何も言う事ができず黙ってそれを見返した。
「どうして君が――去年の『船霊祭』のことを知ってるんだ?」
「あ、あのね、シャイン……」
そこでロワールはクレセントとハーフムーンの事を話した。彼女達は去年も海軍本部で行われていたパーティーに参加していて、例のミュリン王女の事件を目撃していたことを。
「クレセントにハーフムーン……。修理ドックにいるあの二人が? とんでもないところを見られたものだね」
「シャイン、あの二人を知ってるの?」
「ああ。同じ後方の船だから、何度か会った事があるよ。それより」
シャインは再び目を伏せながら大きくため息をついた。
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