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「あなたは優しい人よ。自分のせいで傷ついた彼女のことを気にしている。でもそれは、彼女の事が『好き』だからということではなくて、失恋した彼女を気の毒に思う『同情』なんじゃない?」
「……」
シャインは椅子に座ったままロワールから視線を逸らした。組んだ両足の上で手袋をはめた彼の手が、拳を作ってはそれを開く動作を繰り返している。
「ロワール」
しばしの沈黙の後。
シャインが疲れたように息を吐き出し、目の前に立つロワールをゆっくりと見上げた。
「そう、なのかもしれないな。俺は誰かを愛するということが、どういうことなのか、自分でもよく分かっていないんだと思う。だけど――」
シャインはうなずいて、先程よりも力強い眼差しをロワールへ向けた。
「俺はディアナ様のことが嫌いで、彼女の思いを拒否したんじゃない。俺はただ、俺が彼女の夫になれば、彼女はきっと寂しくて辛い思いをすることになる。それが何よりも嫌なんだ」
「……どうして?」
「どうして――って!」
シャインが信じられないといわんばかりに両目を見開いた。
椅子から今にも立ち上がらんばかりの勢いで口を開く。
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