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「ロワール、ごめん。俺は大切な事を忘れていたようだ」
シャインが手を離してくれたので、ロワールはやっと彼の肩に回していた腕を解いた。シャインが椅子から立ち上がる。シャインは肩をすくめて、右手を口元へ当て頭を振った。
「君がレイディだからこそ、俺達は一緒に気兼ねなく海へ出られるんだったよ。本当に、ごめん」
「――シャイン」
ロワールはほっと安堵に胸をなでおろし、口元に微笑をたたえながらこくりとうなずいた。
「でも、でもね、シャイン」
ロワールは見逃さなかった。シャインの顔に一瞬浮かんだ寂しさを。
「私だって誰よりもあなたのことが大好きよ。だから、あなたが望む限りどんな海だって行くし、嵐だって……」
ロワールは思わずうつむき、だがすぐさま顔を上げて言葉を続けた。
「あなたや乗組員の皆が私を守ってくれるから、ちっとも怖くなんかない」
「ありがとう、ロワール」
そう言ったシャインの顔には穏やかな微笑が浮かんでいた。
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