87人が本棚に入れています
本棚に追加
「さてと。俺のせいで随分つまらない話をしてしまったけど、君、あとどれくらいこうしていられるんだい?」
「えっ?」
シャインは白い礼装の内ポケットに手をやり、そこから鎖に繋がれた、銀色の小さな懐中時計を取り出していた。
「えっとー」
ロワールはクレセントとハーフムーンに言われたことを思い出そうとした。
「確か、一つになった二つの月が天頂まで昇っちゃうと、後はそれぞれ離れてしまうそうだから……」
「天頂ということは、深夜0時ぐらいか」
「うん。あの二人は月が出ている間は、この姿でいられるらしいけど、私は今回が初めてだから、そこまできっともたないわ。多分月が一つに重なっている0時までが限度でしょうね」
「わかった。じゃ、まだ三十分ほど、一緒にいられる時間があるってことだ」
ぱちりと懐中時計の蓋を閉めたシャインは、おもむろにロワールの右手をとった。
「一緒に来てくれ。見せたいものがある」
「え、ええっ? あ、シャインっ!」
ロワールは再びシャインの左腕に自分の右腕を絡め、半ば引きずられるようにして部屋から外へ出た。
最初のコメントを投稿しよう!