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「ここは海軍本部の端にある、物見の塔なんだ。昔はここに歩哨が立って、陸から港を見張ってたんだよ」
どうやら今立っている場所は、塔の外に設けられたバルコニーらしい。
ロワールは思わず前方の手すりの方まで歩いて行った。
冷たい黒い石のそれに手を乗せて、そこから下を覗き込む。
「……」
ロワールハイネス号のメインマストのてっぺんから下を見た時より、遥かに地上が小さく見える。庭園の木々が小さな親指ぐらいの塊にしか見えない。
「すごい。海軍本部に黒い三角屋根の高い塔があるのは知ってたけど、ここがそうなのね」
「うん。アスラトルへ帰ってくる船はみんな、この塔を目印にしているんだ。街で一番高い建物だからね」
シャインがロワールの隣に並んだ。
「ねえシャイン。ほら、あそこ。明かりが二つに分かれてる」
ロワールの指差す方向を見て、シャインが満足げにうなずいた。
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