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「アスラトルの街はエルドロイン河を挟んで、二つに分かれてるんだよ。手前の……この塔があるところだけれど、白っぽい光が川沿いに小さく灯っているのが、軍の施設や商店が集まっている「東区」だよ。黒くて長い筋がエルドロイン河。そして、その向こうに暖かい黄色っぽい光が、斜面に沿って沢山見えるだろう?」
「うん」
「そこが領民の住む居住区の「西区」だ。俺の実家もこの丘陵を越えた裏の岬にある。今夜は船霊祭だから、今は無き船達の魂を鎮めるために、家の軒下に月をかたどったランプを吊し、火を灯す習わしなんだ」
「船の……魂」
ロワールはそうつぶやいて、思わず手すりから手を離した。
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