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「そういうことにしておこうか。ロワール」
シャインがロワールの肩に手を伸ばし、自分の方へ引き寄せた。
その手に込められた力があまりにも強かったので、ロワールは思わずシャインの顔を見上げた。
「もう少しだけこのままでいさせてくれ。二つの月が離れてしまうまで――」
シャインが思っている事と、ロワールが思っている事はおそらく一緒だ。
これが今生の別れというわけではないと。それはわかっているが。
けれどシャインの願いとは裏腹に、銀と金の月は再びそれぞれの軌道へと戻っていこうとしている。
ここで一緒に過ごせる時間はほとんど残ってはいない。
ロワールは満足げな微笑を、そのちょっと幼さが残る顔に浮かべてうなずいた。
「シャイン、今夜は色々あったけど楽しかったわ」
「そうかい?」
シャインの口調は重かった。
本当にロワールがそう思っているのか訝しんでいる様子だ。
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