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ロワールはそんなシャインの頬に手を伸ばした。手の甲にかかる彼の髪が月の光に透けて眩しい。それに目を思わず細める。
「私ね、シャインとこうして、二人っきりで話をしたかったの」
「話なら、いくらでもしようじゃないか。夜はまだ半分残ってる」
ロワールはふふっと微笑を漏らした。
「ロワールハイネス号で待ってるわ。ホープさんが船体のペンキを綺麗に塗り直してくれたの。このドレスみたいな色で」
そういうとシャインが肩をすくめてため息をついた。
「……まだ根にもってるのかい?」
「そりゃそうよ。私がどんな思いで、ここまでやって来たか、ちゃんと最初から話してあげ……!」
ロワールは感じていた。
今まで意識していたかりそめの体から、感覚が急速に失われていく事に。
肩を掴むシャインの手も、そこから感じる彼の温もりも、水のように流れて消えていく。船に宿る『魂』が、陸を歩ける魔法の時間はこれでおしまい。
「今夜はロワールハイネス号に戻る。だから、俺が来るのを待っててくれ」
眩しい銀と金の光の中で、シャインの声だけが響いていた。
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