87人が本棚に入れています
本棚に追加
◇◇◇
「艦長より申し送りです。針路、後一時間、南東を維持です」
「了解した。針路、南東維持」
二ヶ月限定の新・航海長(マスター)ヴィズルは、命令を伝えたクラウスへにやりと笑い、内容を復唱した。
そして隣で舵輪を握っている次席航海士のグラッドに声をかける。
「グラッド、南東だ……ちょい船首を風下へ落とせ」
「了解、航海長」
グラッドは舵輪を右に大きく回して船の反応をみる。
目の前にある木製の羅針儀箱におさめられたコンパスをのぞき、その針が<南東>へ示すようにする。
針が南に行き過ぎないように、常に南東を指すように、船の動きを先読みして舵を取るのだが、そのあたりのカンが経験と正比例するのだ。
最初のコメントを投稿しよう!