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「ロワールハイネス号自体、元々足の速い船だがアスラトルへの帰路は風が逆になる。『船の精霊(レイディ)』が関与しなくても、それぐらいの日数での帰港は可能だ」
「仰る通りです」
「ちなみに行きは何日だ?」
「四日です」
アドビスは沈黙したまま、冷ややかな笑みを浮かべるロイスの顔を見つめた。
縁あって彼の事は誰よりも信用ができる。
ロイスはアドビスの目であり耳であった。
「しかも閣下、驚いたことにロワールハイネス号は操舵索が切断されるトラブルに見舞われ、一時操船不能状態にあったそうです」
「その情報は確かなのか?」
ロイスが狼を思わせる鋭い瞳を細めて頷いた。
「ロワールハイネス号の船客、ディアナ様ご自身からお話を伺うことができました」
「ほう」
アドビスは珍しく驚嘆の声を上げてみせた。
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