3-1 風の報せ

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「ロワールハイネス号自体、元々足の速い船だがアスラトルへの帰路は風が逆になる。『船の精霊(レイディ)』が関与しなくても、それぐらいの日数での帰港は可能だ」 「仰る通りです」 「ちなみに行きは何日だ?」 「四日です」  アドビスは沈黙したまま、冷ややかな笑みを浮かべるロイスの顔を見つめた。  縁あって彼の事は誰よりも信用ができる。  ロイスはアドビスの目であり耳であった。 「しかも閣下、驚いたことにロワールハイネス号は操舵索が切断されるトラブルに見舞われ、一時操船不能状態にあったそうです」 「その情報は確かなのか?」  ロイスが狼を思わせる鋭い瞳を細めて頷いた。 「ロワールハイネス号の船客、ディアナ様ご自身からお話を伺うことができました」 「ほう」  アドビスは珍しく驚嘆の声を上げてみせた。
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