3-22 裏切りの砲火

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 ルウムは封筒の封印が破られていない事を確認し、ポケットから取り出した短剣でそれを開封した。  入っていた命令書に目を通したルウムの顔には、ありありと落胆の色が現れている。  予想がついたシャインとジャーヴィスは、お互いの顔をちらりと見合わせた。 「本部はノーブルブルーの帰還を命じてきました……提督」  掛け布団の上に置かれたラフェールの、肉が落ちた手がぎゅっとそれを握りしめる。 「――やむを得まい」  目を閉じ、うなだれたラフェールの声はとてもしわがれていた。ルウムはそれを聞きながら、命令書を封筒に戻した。 「残念です。が、我々はアストリッド号を失いました。同時に多くの水兵達も。やはり、敵の情報をもう少し詳しくつかまないことには、こちらが、甚大な被害を受けるだけです……」  さりげなく握られたルウムの拳が、微妙に震えているのをシャインは見た。  旗艦アストリット号を失った、その時の怒りがきっと宿っているのだろう。
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