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◇◇◇
「グラヴェール艦長」
ラフェールのかすれ声に、シャインは我に返り、視線を奥の寝台へと移した。
「はい、閣下」
「我々は今宵のうちにエルシーアへ帰路をとる。君も、そうした方がよかろう」
シャインはいつもの人当たりの良い微笑をたたえた。
「喜んでそういたします。我々が艦隊の目になりましょう」
「うむ……それは、実に、頼もしいかぎりだ……なあ、ルウム」
ラフェールにそう振られたルウムは、角張った顔に笑みを浮かべながら頷いた。
その眼光は相変わらず鋭いが親愛に満ちていた。
ルウムと言葉を交わした時間はあまり多くないが、昨晩はシャインを艦長室の夕食に招いてくれた。
昔、アドビスの元で一緒に海賊船を捕らえたり、彼自身にもシャインと同じくらいの年の子供がいて、今年は海尉への任官試験を受けるという個人的な事も話してくれた。
シャインはルウムに好感を持った。
彼が何を想い、家族の元を長年離れ、海賊拿捕専門艦隊――ノーブルブルーの船に乗っているのか気になったが、流石にその胸の内まで踏み込むことはできなかった。
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