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「ジャーヴィス、お願いだから返事をしてくれ!」
穴から時折差し込む弱い月光が、ホコリを被って白っぽくなったジャーヴィスの髪を照らす。形の良いその額から、ひとすじの赤い血が流れ落ちていた。
「ジャーヴィス!」
叫ぶように呼び掛けたその時、閉ざされていたジャーヴィスの切れ長の目がパッと開いた。
「……丈夫です……きこえて、いますよ」
「……ジャーヴィス」
シャインは心の底から安堵したものの、ジャーヴィスの表情が一瞬曇るのを見てしまった。平静を保とうとしたが、彼が自分を庇って負傷した事に罪悪感を覚え、シャインは力なく頭を垂れた。
「お怪我は、ありませんか?」
落ち着いた、ジャ-ヴィスの声。
けれどそれは余りにも弱々しくて、かすれていた。
「俺は大丈夫だ。君のおかげで」
シャインはそう返事をしたものの、暗闇に目が慣れてくるにつれて、はっきりしてきた周囲の状況に動揺を隠しきれずにいた。
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