3-22 裏切りの砲火

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「ゴホッ……そこに、いるのは……誰、だ?」  シャインは突如聞こえたラフェールのか細い声に、窓があった隅を見た。 「……グラヴェールです、ラフェール提督」  ジャーヴィスの事で頭が一杯で、他の事などすっかり忘れていた。  シャインは返事をした後、止血を施したジャ-ヴィスの体をそっと横向きに寝かせた。  そしてゆっくりと立ち上がり、ラフェールの寝台の方へ行こうとした。  ブーツが床に飛び散ったガラス片を踏むたび、ジャリっと音を立てる。 「提督……ああ……」  シャインは思わず口元を右手で押さえ、出てきた嗚咽を飲み込んだ。  サロンの窓際にいたルウムが、やはりラフェールを庇ってすでに絶命していた。  彼の命を奪った子供の腕ぐらいある木片が、うつぶせたその左脇腹へ深々と突き刺さり、どす黒い血が辺り一面、床をも染めている。
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