3-22 裏切りの砲火

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「エルガードの人間は、誰も、信用できぬ。それが今、実証された……」 「ですが、ファスガード号の砲門を開けば、浸水が早まります! ファスガードも沈む事に!」  半ば叫ぶように反論しながら、シャインはラフェールの青白い顔に、微笑がのぼるのを見た。 「ああ……ファスガード号も沈む。いや、沈めなければ、ならぬ。これほどの火力の船を、ムザムザ海賊などに……くれてやるものか……わかるだろう?」  ぜいぜいとラフェールは苦し気に喘いだ。 「提督……」 「行け。手後れにならぬうちに」  ラフェールは握りしめていたシャインの服の襟から手を放し、もぞもぞと布団の中を探った。そして細長いものをシャインへ押し付けるようにして渡した。  ずっしりとした重みのあるそれは、金の豪勢な拵(こしら)えを施した、細身の佩剣だった。
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