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「黙っててくれ、お願いだから!」
叱咤するように言ったシャインは、ジャーヴィスの肩を担いで、ゆっくりと立ち上がった。だが力の抜けたジャーヴィスの体重が一気にかかってきて、それを支えきれなくなったシャインは、右前方に体勢を崩し倒れかけた。
「――っ!」
ガラス片を踏み砕きながら部屋の壁に右肩を押し付け、かろうじて寄りかかる。
倒れずに済んだ事に大きく安堵の息を吐く。
額に汗が浮いて、濡れた前髪が貼りついている。
息を整えながらシャインは顔を上げた。
ジャーヴィスを担いで上甲板まで行くのは重労働になりそうだ。
けれど。
「……君は、俺に、言ったじゃないか」
シャインは体勢を立て直し、ジャーヴィスを抱えたまま一歩ずつサロンの出入口へ近付いた。砲撃の衝撃で扉は部屋の外に向かって半開きになっている。
「可能性があるかぎり、誰も、失いたくないと……」
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