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しかし、とシャインは口の中で再度つぶやいた。
ゆっくりと顔を上げて、階段を睨みつける。
いくら睨みつけても、頭の中で内なる自分がそっとささやく。
――認めたらどうだ。
悩んでいるふりをしていても、お前は船を沈めるつもりなのだ。
人は万能ではない。何かを生かすには、別の何かを見捨てなければならない。
――でなければ、全てを失ってしまう。
「エルガードに……どれだけ海軍の人間が残っているでしょうか。このファスガード号の人間も、本当に信じられるのか……俺には分からない。だから」
「――行って頂戴。早く」
再び響いた女性の声に、シャインは思わず息を詰めた。
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