87人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの子、泣いてるの。私達を助けられないなら、早く終わらせて……」
「ファスガード……」
心境を見抜かれて、シャインは自らの傲慢さを思い知った。
船の精霊に嘘をつくことはできない。
できれば船を沈める事を回避したい。そしてエルガード号を取り戻したい。
しかし悲しいかな、海軍に在籍して六年たつが、こんな海戦を体験するのは初めてだ。
しかも相手は1等軍艦アストリッド号を沈めた連中で、どうやらエルガ-ド号にも紛れ込んでいたのだ。
自分には船を取り戻す手立てなど思い付かないし、そんな余裕もない。
できることといえば、ファスガード号がやられる前に、海賊もろともエルガード号を沈めることだ。
「すまない。せめてラフェール提督やルウム艦長がいたら……君達を失わずにすんだはずだ。俺があの人達の代わりになればよかった」
「そんなこと――言ってはだめ。あなたはあなたのできることをすればいい。私は、できるだけ長く浮いていられるようにがんばるから」
最初のコメントを投稿しよう!