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「大切な人を失う事ぐらい悲しい事はないわ。私はエルガードと共に行ける。けれど、あなたがいなくなったら、彼女は誰が守ってあげるの?」
シャインの顔に影が落ちた。
急に胸騒ぎがしたのだ。
あの時、サロンに下りる前に聞いたロワ-ルの声。
いつものわがままだと一蹴してしまったが、本当は助けを求めていたのではなかっただろうか。
「ファスガード……」
彼女はシャインの不安を感じ取ったようだった。
「さ、早く行きなさい。最後に……船の精霊と話ができるあなたに会えて、よかったわ。シャイン」
「ファスガード!」
「……」
白い霞が闇の中に溶けていくように、ファスガードの姿は薄らいでいった。
一人暗い通路に残されたシャインは、はっきりと聞こえてくる浸水の音を意識した。
踵を返し、上甲板へ上がる階段へと走る。
「ロワール……待っててくれ。すぐに戻るから」
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