3-25 魂が叫ぶ嘆きの声

14/15
前へ
/659ページ
次へ
「大切な人を失う事ぐらい悲しい事はないわ。私はエルガードと共に行ける。けれど、あなたがいなくなったら、彼女は誰が守ってあげるの?」  シャインの顔に影が落ちた。  急に胸騒ぎがしたのだ。  あの時、サロンに下りる前に聞いたロワ-ルの声。  いつものわがままだと一蹴してしまったが、本当は助けを求めていたのではなかっただろうか。 「ファスガード……」  彼女はシャインの不安を感じ取ったようだった。 「さ、早く行きなさい。最後に……船の精霊と話ができるあなたに会えて、よかったわ。シャイン」 「ファスガード!」 「……」  白い霞が闇の中に溶けていくように、ファスガードの姿は薄らいでいった。  一人暗い通路に残されたシャインは、はっきりと聞こえてくる浸水の音を意識した。  踵を返し、上甲板へ上がる階段へと走る。 「ロワール……待っててくれ。すぐに戻るから」
/659ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加