3-2 休暇

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「シャイン」  たまりかねてホープはシャインに呼びかけた。  船の精霊に心を寄せるシャインのことは以前からよく知っていた。  複雑な家庭環境も一因だろうが、造船所を遊び場にしていたシャインはどの船に『船の精霊(レイディ)』がいて、こんな話をした。もしくは誰も気づいていないが、あの船のどこそこには破損個所があって、修理する必要があると精霊が教えてくれた、とホープに語ったことがあったからだ。  だからこそ危惧していることがある。  もしもロワールハイネス号に危険が迫った時――嵐でも砲撃でも事故でも――彼女が沈むようなことになったら。  シャインはきっと船に残り、彼女を置いてはいかないだろう。  『船の精霊(レイディ)』の魂は「船鐘」に宿るが、体――船体を失えば精霊は存在し続けることができなくなり、消失してしまうからだ。
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