3-26 燃えさかる甲板で

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「大丈夫か? 今にもぶっ倒れそうな顔だ。手、貸すぜ」  あと五歩ぐらいの距離まで近付いたヴィズルが、心配げに眉根を寄せてこちらを見ていた。 「いや、少し疲れただけだ。ケガはしてないから、その必要はないよ」  シャインはヴィズルに薄く笑ってみせた。  口が少し悪いが、ひょうひょうとしつつ、いつも自信に満ちているヴィズルの顔を見ただけで、肩の荷が下りたような気がした。  途端、今まで張り詰めていた気力が萎えた。  これでやっと終わる。  後はただ、ロワールの元へ帰るだけ。たったそれだけだ。  ヴィズルがどういう経緯でここにいるのか、それはわからない。  けれどそんなこと、今更構わないとも思う。  現に彼は自分の身を案じて、危険なこの船にわざわざ乗り込んできてくれた。  ひょっとしたらロワールハイネス号は、流れ弾に当たる危険を避けるために、沖合いでファスガード号の乗組員を乗せて、待っているのかもしれない。  シャインは、ともすればぼんやりとなる頭を軽く振り、息を吐いた。  緊張感が抜けたせいで、腰に帯びたラフェールの細剣が、急にずっしりと重くなった気がする。
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