3-26 燃えさかる甲板で

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「ロワールの事は心配ない。あんないい船を、海軍共の砲撃戦で傷つけたくなかったからな。だから大事に俺が預かっている」  涼やかな顔をしたヴィズルは、シャインの戸惑いを察するように呟いた。  短剣を再び左手に握りなおし、伏し目がちにその昏(くら)い刃を見つめる。 「アイル号で会ったお前に『船鐘』を預けたのは、間違いじゃなかった」 「……!」    シャインは言葉を失い暫しヴィズルの瞳を見つめ返した。 「アイル号、だって?」  シャインの動揺を見たヴィズルの唇が、再び自嘲気味に引きつる。 「あの時、俺から船鐘を奪おうとしたのは……まさか」 「ああ、俺だ。お前が邪魔しなけりゃ、ヴァイセを始末して船鐘をもらって帰るだけだった。だがあれは俺の手に余った」 「どういうことだ」  ヴィズルが短剣を持ったまま肩をすくめた。 「覚えてないのか? 俺がお前から船鐘を奪おうとした時、あん時はロワールって名前じゃなかったが、『彼女』が邪魔をした」
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