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「ヴィズル。君の目的は一体……」
「一応礼は言っておく。あの鐘は二十年間ずっと眠り続けていた。俺の手で起動させようと思っていたが、お前のお蔭で手間が省けた」
「どういうことだ。説明してくれ!」
「説明? その必要はない。『船鐘』とロワールは俺の手中にある。お前はもう必要ない」
「ヴィズル!」
おもむろにヴィズルはシャインへと歩を進めた。
燃え盛る火の粉を受けて、赤く光る短剣の刃を顔の前にかざしながら。
「いや……あと一つ、役に立ってもらおうか。アドビスの野郎に、苦痛を与えるためにな!」
ヴィズルの短剣が闇の中で光の弧を描く。
確かな狙いで斬り付けられたそれを、シャインは鼻先のきわどい差で躱した。
手首を返し再びヴィズルが切り付けてくる。
シャインはさらに後退して、執拗に繰り出されるヴィズルの刃を避けた。
と、背中に固い物がぶつかった。
艦長室の板壁に追い詰められたのだ。
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