3-26 燃えさかる甲板で

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「もう後がないぜ。抜けよ」 「ヴィズル!」  風を切る音がして、シャインは体を左にひねった。  タンッ!  短剣が背面の板壁にめりこむ。シャインはその隙にラフェールの剣を引き抜き、真横に薙ぎ払った。 「おっと!」  短剣から手を放したヴィズルは、猫のように俊敏にそれを後方へ跳ねて避けた。そして慣れた手付きで腰の長剣をすらりと抜き放つ。  炎上するファスガード号のフォアマストの火が、ついに真ん中のメインマストにも燃え移り、帆や上げ綱が散々と甲板へ舞い落ちる。  その炎を背後に銀髪を赤く染めながら、ヴィズルは今まで見せた事のない表情を浮かべていた。  口元に余裕を感じさせる笑みが消え失せ、なにかに憑かれたような熱っぽい眼差しでこちらをじっと見つめている。  微動だにしない紺色の瞳の中に、背筋が凍り付くような冷たい感情を、シャインは垣間見た気がした。  乱れる呼吸を整えつつ、シャインは剣を構えるヴィズルに尋ねた。
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