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シャインはヴィズルを見上げた。
口元をぐっと噛みしめ、無言で見下ろしている憮然とした顔を。
シャインは右手に持ったラフェールの剣を握ってはいたが、それを振るう気にはなれなかった。ただ、自分を見下ろすヴィズルの顔をじっと見ていた。
沈黙に耐えきれず、視線をそらしたのはヴィズルの方だった。
「お前はいい奴だ。少なくとも、アドビスの息子だってことが信じられない程でね……俺はお前を気に入りかけた」
それを聞いてシャインはふっと笑った。
何だかすごく可笑しかった。
「そうかい。俺も君の事……いい航海士として気に入っていたんだけどね」
蹴られた左脇腹に鈍痛が走って、シャインは顔を歪めた。
「でも、そうじゃなかった」
くっくっくっ……と、今度はヴィズルが低く笑う。
肩を流れ落ちる長い銀髪が、炎を照り返しながら鈍く光った。
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