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物怖じせず正面から見つめるシャインの様子に、ヴィズルがぶるっと身震いをした。
睨み付ける夜色の瞳がぐっと細められる。
「確かに、何も知らないまま殺すっていうのも理不尽だな。お前に罪があるとすれは、あの男の息子だったということしかないんだから」
ヴィズルは油断なく剣をシャインに突き付けたまま口を開いた。
「お前の父親……アドビス・グラヴェールは昔、古参のエルシーア海賊の一人“月影のスカーヴィズ”と組んで海軍の仕事をしていた。スカーヴィズはエルシーア海での覇権を握るため、あくどい海賊や、邪魔な同業者をアドビスに売っていたのさ。そいつらを捕まえることで、アドビスの海軍での評価は高まり、奴はあっという間に昇進した。
だがこんな関係がいつまでも続けられるはずがない。この二人の末路は、大体想像がつくだろう?」
シャインは信じがたいアドビスの過去に驚きつつ目を伏せた。
数々の功績はそうして築き上げられたものだったとは。
「あの人が、その海賊を裏切ったのか」
小さく鼻で笑うヴィズルの声が聞こえる。
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