3-27 憎しみの炎

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「十分時間をかけて罠を張った。始めからラフェールと数名の士官以外は、俺の昔の仲間を乗り込ませた。みんな三年以上も海軍の水兵として乗っていたんだがな。 アストリッドを制圧するのは雑作も無い事だった。エルガードもまた然り。さすがにファスガードは、ルウムの目が厳しくて同じ手を使えなかったが……アドビスが乗っていれば、さぞかし愉快な光景を見ただろう。信じていた人間に裏切られ、殺される者の気持ちがどんなものか……いや、あの男にはそんなものわかるまい……」  ヴィズルは急に口ごもった。  そして頭を振り、真剣な眼差しでシャインを見つめた。  先程まで憎しみにかられていたそれとはうって変わり、憂いのこもった寂し気な目。  はたと力が抜けたように、ヴィズルは剣先をシャインの喉元から下げた。 「シャイン……今日を最後に海軍から去れ。それを誓えば見逃してやろう」 「ヴィズル?」  キッとヴィズルの眼差しが再び鋭く光る。 「その名で俺を呼ぶな。俺は“月影のスカーヴィズ”の名を受け継いだ。お前の信じていた“俺”はもういない」 「待ってくれ」
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